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まっ★つんの避暇地

本とか映画とかマンガとかの感想を書いたり紹介したりするブログです

【本】 鋭い目線とキレキレの(下ネタ)ユーモア 『米原万里の「愛の法則」』 米原万里著

本の紹介

 Kindleの日替わりセールで購入。著者の経歴、ロシア語同時通訳者、を見て衝撃。

「これもしかして京大現代文で出題された人ちゃうか」

どんぴしゃでございました。2012年に本書の著者の作品が出題されています。『前門の虎後門の狼』。同時通訳の苦悩を描いたもので、かなり読みやすかったので印象に残っています。


 本書は著者の一般向けの講演を文章化したもののようですね。四本掲載されています。以下章立て。全部書くと長くなるので、特に面白かった前半二つを中心に書きます。

 



第一章 愛の法則
第二章 国際化とグローバリゼーションのあいだ
第三章 理解と誤解のあいだ――通訳の限界と可能性
第四章 通訳と翻訳の違い


知的な下ネタ!?

 第一章は著者独自の男女論といったところ。のっけから下ネタ全開で爆笑。とりあえず引用。

―私はあらゆる男を三種類に分けています。皆さんもたぶん、絶対そうだと思います。
 第一のAのカテゴリー。ぜひ寝てみたい男。第二のBは、まあ、寝てもいいかなってタイプ。そして第三のC、絶対寝たくない男。金をもらっても嫌だ。絶対嫌だ(笑)。―(中略)―
 男の人もたぶん、そうしていると思いますけれども、女の場合、厳しいんですね。Cがほとんど、私の場合も九〇%強。圧倒的多数の男とは寝たくないと思っています。おそらく、売春婦をしていたら破産します。大赤字ですね。―
米原万里の「愛の法則」』 第一章より


こういった、感情に依るものなど普段まじめに考えないことや、”世間一般の感覚で”言わないほうが良いとされていることに対しての大真面目な考察、滅茶苦茶好きです。例が例なだけに要らぬ誤解を招きそうですが。

これこそが本当のユーモアという意味での下ネタだ!みたいな(笑)。

軽い感じで進めつつも主張はしっかりとしていて、著者曰くヒトの種としての本流は女性で、男性はサンプルだと。男性の個体によって肉体的な特徴の違い(例えば身長や体重)の振れ幅が女性よりも大きいのは、どのような形質が今の時代に適応するかを確かめるためであるとのこと。

本来私はこのようなネタを装った女性マンセーな主張はヘドが出るほど嫌いなのですが、この文章は中々どうして面白かったです。暴論と言われればそうかもしれませんが、割と納得するところが多かったです。サンプル論いいですね。ここで納得してしまうあたり自分に男性を至上とする思想は無さそうです(?)。

他の例として、男性は生殖機能が働く期間が長い(極端に言えば死ぬまで働く)。対して女性は子孫を残す機能をもつ期間が短いが逆に言うとそれ以降の期間、すなわち種の存続という生物の本能から遠ざかった期間が長い。

この考え方は目から鱗でした。こう考えると男性は本能を捨てられない"動物"であるが、女性は1ステージ上の存在になるということでしょうか。負けた気がしますね。


そもそも日本が大好きだという話


 最近、グローバル化グローバル化ってよくわからないまま騒いでる人多くないですか。そもそも一口にグローバル化と言っても意味が広すぎるし、日本はもうすでに世界に開かれた国家じゃないですか、というような著者の講演が第二章。

しかし開かれた国家とはいってもそれは昔と比べて格段に世界に触れられる"状態にある"というだけで、件の人達はみな、世界=アメリカになっていると氏は言います。それは歴史的背景に基づくものではあるのですが、軍事力と経済力が優れていれば文化も凄いのかと苦言を呈しています。このあたりは英語偏重の話とも絡めて後半でも語られています。これはある程度突っ込むと政治的というか国際情勢に関わった別の話題となるのでホドホドにしておきますね。機会があればそれ関連の本の記事を書きます。

ただこれ、個人的には一部の騒いでる人たちの声が大きいだけな気がします。やれ海外の文化がどうとか、留学がどうとか、英語がどうとか、そういったものを絶対の正義として他人に押し付ける人、本当に苦手です。別に私はそれらに興味がないだけで否定する気は毛頭ないのです(というか私の場合は英語始め言語を学ぶことが不得意かつ致命的に嫌いなだけなのですが……)。

この辺は第四章でも軽く述べられています。作者のまわりでは、留学から帰って来た奴らはほとんどが海外文化至上主義者になっている。あるいは逆に日本文化至上主義者になっているらしいです。


独りも好きでしゃべるのも好きです

 …長くなりすぎそうなのでこのあたりにしておきます。後半も面白いです。同時通訳の体験談や英語偏重すぎる日本社会への著者の警鐘などなど…、一貫して「コミュニケーション」について書かれています。

著者は「人はコミュニケーションを求めてやまない生き物」と語っています。全面的に同意します。私も常々考えています。人の他の動物と比べた一番の特徴は言語による高度なコミュニケーションなのは言わずもがな。つまり人として生き、人生を豊かにするには、いかにコミュニケーションを多様な形で充実させるか、にかかっていると言っても過言ではないでしょう。

私は人との対話を楽しみ、楽しみ、楽しむことが人として授かった生を最大限充実させる方法だと信じて疑っていません。大げさでしょうか(笑)。

 ともかく、本書はそんな、コミュニケーションによる豊かな人生、を形成するヒントになる一冊です。

米原万里の「愛の法則」 (集英社新書)
 

 

 

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